チベット密教巡拝団 高野山で交流と平和祈願(佛教タイムス令和6年11月21日号)

チベット密教僧ゲシェ・テンジン・ゾパ師と米豪等約10ケ国の在家信者による国際巡拝団32人が10月31日、和歌山県高野町の高野山で密教文化ワークショップを体験した。世界各地で法を説くゾパ師の目標は、ネパールにあるチベット密教の聖地に世界平和の仏塔を建てること。高野山には、同じ密教である真言宗と平和の祈りを共有する目的で登拝した。

巡拝団を受け入れたのは、高野山真言宗三石不動尊(橋本市)の佐藤妙泉住職が主宰する「紀州高野山横笛の会」。一行は午前中、高野山大師教会で「香りと瞑想のワークショップ」に参加し、7種類の祈りの御香をブレンドしてオリジナルの御守り(御香袋)を作った。

午後は佐藤住職が修行した大圓院へ。インド・チベット仏教研究の第一人者で元高野山大学学長の藤田光寛住職が、チベット密教と真言宗の共通性について「8世紀後半にパドマサンバヴァ(グル・リンポチェ)がチベットに入って密教を伝え、ほぼ同じ頃に弘法大師が日本に真言密教をもたらした」と話した。

一行は、大広間にあるチベット密教の巨大な砂曼荼羅を拝観。続いて、藤田住職との密教談義が行われた。参加者から「弘法大師が行った虚空蔵求聞持法とはどんな修行か」と問われると、「失敗したら死んでしまうほど厳しい」と回答。一同は驚きの表情を見せた。

藤田住職は「世界で戦争が絶えない」と語りかけ、「それぞれ個性のある仏様から成る密教の曼荼羅は、様々な民族、人種が共存する世界平和の理想形だと思う。バラバラではなくハーモニー」と提起。すると参加者から「世界平和の祈りを捧げたい」との提案がなされ、大乗仏教共通の般若心経を唱えた。

巡拝団の女性は、「高野山からすごく強くてとても静かなエネルギーを受け取った」

と感想。「横笛の会」の佐藤住職は、「仏教は国際語。これからも平和のための国際活動に励みたい」と語った。

巡拝団の年齢は幅広く、女性が半数超。世界各地の聖地や霊場を巡礼している。今回は2週間のツアー。高野山の前には京都と奈良を訪れ、後には熊野に向かった。