週刊佛教タイムス記事(令和6年5月23日号)

和歌山・三石不動尊

戦没者慰霊法要を初厳修

タイ日本人納骨堂で決意

和歌山県橋本市山田の高野山真言宗三石不動尊(佐藤妙泉住職)で3日午後、戦犯戦没者の土砂加持供養慰霊祭を営んだ。県内外から信徒ら約60人が参列。その後、裏山を登って瀧の行場に行き、卒塔婆7本を不動瀧に供えて御瀧大明神の流水灌頂を厳修した。佐藤住職に続き信徒が順番に瀧に向かって加持土砂を散布。皆で成仏の作法を修した。

 昨年12月にタイを訪ねた佐藤住職は、バンコク市内の寺院ワットラージャブラナ境内にある日本人納骨堂(ワットリアップ)を訪問。この慰霊祭はその時に、同寺からラオスへ向かい消息を断った元陸軍将校・辻政信や異国で無念の死を遂げた大勢の兵士の存在を知ったことに始まる。

 2月29日にタイを再訪。同寺に4日間滞在し、供養の祈りを捧げた。「上座部仏教のタイのお寺では僧侶から『尼僧といえども女性を同じ棟に泊めるわけにはいかない』と言われたが、本質は僧侶仲間と認識してくれて協力的だった。運よく空いていたホールを貸してくれた」(佐藤住職)

 タイでの4日間を通して、日本人納骨堂に奉祀されている辻政信や日本人納骨堂に奉祀されている「名もなき兵士たち」、さらには「遺骨も見つかっていない戦死者たち」を自坊でも弔うことを決意。帰国後、三石不動尊境内・熊鷹大神社の縁日「旧初午祭」の3月19日から祈り始め、「不動瀧をのぞむ慰霊祭」として毎年5月3日に慰霊の対象を決めて営んでいる大祭を結願と決めた。

 結願日は追善供養の秘法・土砂加持を修法するため、職衆として県外から高僧3人が出仕。佐藤住職と共に光明真言を力強く唱えた。佐藤住職は、「人類の惨禍、欲が高じて起こる戦争より大なるはなく業火より甚だしきはなし」と回向文を奉読。「犠牲者の叫びを耳にし共にその霊魂を弔い、世界の真の平和と人類の覚醒を祈る」と述べた。

 職衆を務めた僧侶は法要後、「戦没者を供養し、“今の世の中、こんなことでいいのか”と問うことは大事」と異口同音に感想。佐藤住職は「千人の少年兵」の存在に言及し、「毎年、何らかの形で戦没者慰霊を続けていきたい」と話した。

 三石不動尊は後継者不在から6年程前に廃寺に。在家出身の佐藤住職が5年前に入寺し、昨年7月に新寺建立の形で法人格を再取得した。この日も法要後には参列者全員で手作りの料理を囲んで談笑するなど、新たなコミュニティによる賑やかな1日を過ごした。